役者のかつらに注目して公演を観た思い出

数年前働いてアルバイト先に、舞台役者をしている人がいました。その人は大柄の男性で、よく通る声をしていました。

その声からして「舞台役者は違うなあ」と思っていました。昼食を一緒に食べたりするくらい仲は良かったのですが、ある日その男性から舞台を観に来てみないかと誘われました。生の舞台を何年も観ていなかった私は、好奇心をそそられて即OKと返答をしました。友人価格でチケットを安くしてもらい、お得に買うことができました。

確か公演は土曜日だったのですが、一緒に誘える友人の都合がつかなくて一人で観に行くことになりました。舞台はその男性が所属している劇団が主催だったのですが、空席が見当たらないほどの盛況ぶりでした。

こんな大勢観ている人の中で演技をするなんて凄いなあと思いました。

開演してしばらく経ったとき、大柄な男性が登場しました。

しかし、私はそれが友人だとすぐには気付きませんでした。なぜなら、頭に舞台用のかつらを被っていたからです。その舞台は時代劇で、友人はひょうきんな性格の町人役でした。ただ、時代劇ですから現代のヘアスタイルではおかしいですので、クオリティの高いかつらを被っていたのです。また、服装ももちろん江戸時代に合わせた格好になっていたので、それも気付きにくかった理由です。

友人の良く通る声を聞いて、それでやっと気付きました。あまりにもかつらのクオリティが高かったですし、役に合わせて人相も変えていました。

かつらをしていることでより良い雰囲気が出ていましたし、ヘアスタイルをどうするかで人の印象がそこまでガラリと変わるとは思っていませんでした。その後友人はずっと舞台に出続けており、物語の重要なシーンでもだいぶ活躍していました。主役ではなかったですが脇を固める重要な役だったことは間違いありません。

公演が終わった後あいさつに行ったのですが、そのとき「かつらがよくできていたので全然気づかなかったよ」と、まず声をかけました。すると男性は「優秀なスタッフが作ったかつらだから。江戸時代の雰囲気が出てたでしょ」と言ってきました。私はその通りだと思いながら、しばらく公演のことについて話をしました。

舞台役者が形から入って演技を作っていく話をどこかで聞いていたので、クオリティの高いかつらを被って出てきた友人を見て妙に納得しました。舞台では演者の演技ばかりを気にしてしまいますが、久しぶりに観たことで演技はもちろんかつらにも注目しました。ですので、舞台演劇の楽しみ方が、その公演観たことで1つ増えました。